2004.04.29

退避勧告

NGOのベテランて感じの白髪のおじさんがテレビで言っていたが、退避勧告はビジネスマンと観光客向けのものと理解している、だって。

なるほど、記者とNGOは危険なところに行ってなんぼ、というか、危険なところにこそ必要としている人がいるものだからね。記者として、戦場で何が行われているか世界に発信することは大切なことだし、戦争で傷ついた人たちを助けられるのも、武装せず国の機関ではないNGOにしかできない時もある。もちろん、危険なところへ敢えて行くのだから、自分の命を守るのも、守りきれなくても自己責任なのは当然。

危険なところへ自殺しに行くわけではないから、危険度の見極めをできるだけ正確に行う必要があるのだが、時に判断を誤ったり予想外のことが起こる事はあるだろう。今回、人質にされるような事態が起こってしまったが、結果だけからは判断が間違っていたとは言えないと思う。予見可能だったかどうか、だね。もちろん、退避勧告が出てるかどうかは、行くか行かないかの判断材料には含まれない。

祖国の助けが必要になった場合、自己責任ではあっても、国として、できるだけのことをして助けようとするだろう。ただし、犯人から応えられない要求をされたら断るしかない。自衛隊撤退が応えられない要求かどうかはここでは触れないでおく。

さて、救出に掛かった費用を、すべて国が負担する事を良しとするかしないかは、ひとえに、国民が彼らの事を誇りと思えるかどうか、だよね。彼らの行動に感動できるかどうか。「自己責任」の範囲を、自分の命までとするか、人質になって救出されたときの帰りのキャーター便代の負担までとするか、掛かった総額 (数千万〜数十億?払えないが) とするか、その誇りと感動に反比例するわけだ。

アメリカ人が、日本政府が費用の一部を被害者に請求した事に驚くのは、危険なところに入る記者やNGOの存在を誇りに思っているからだろうね。日本でも、NGOの活動そのものに関しては国も補助金を出してるのだが。

人質3人の評判が良くないのは、家族の行動が大きいと思う。犯行グループの要求が自衛隊撤退だったことから、そもそも事件が起きたのは自衛隊派遣に原因があるとして、政府を責め撤退を求めたのはいけなかった。自衛隊が派遣される前からずっと居続けていたなら、派遣で日本人がテロの対象になったと政府を責める事はできるかも知れないが、自衛隊が派遣された状態でイラクに入った (入り直した) のだから、自衛隊派遣が原因の危険も考慮した上で入っているはず。悪いのはまず犯人なのに、家族が日本政府の責任に摺り替えたことで、逆に、行った被害者が悪いという反論を誘ってしまったのではないだろうか。

しかし、犯行グループの声明によれば、高遠さんのボランティアの実績と、家族の犯人に対しての訴えかけと、支援者たちの自衛隊撤退を求めるデモの映像を見て、日本政府と日本国民は違うと解釈し解放に繋がったわけで、家族が政府と対立したことが3人の命を救ったのかも知れない。政府は怒って費用請求してくるし、世間の評判が悪くなったけれど。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2004.04.21

自己責任

イラク人700人の命より、日本人3人の人質が気になってしまうのは、日本人だからだね。

登山に例える人がいる。遭難救出時の費用を遭難者に請求することがあるのだから、3人に請求してもおかしくないってね。危険なところに自ら進んで入っていっての遭難は、安全度の判断を誤った自分に責任がある。自己責任とは、自分の命に責任を持つだけでなく、自分の行動が引き起こす影響にも責任を持つこと。周りに迷惑をかけたのだから費用負担は当然。

何か抜けてない?

入っていった目的。登山は自分のためにするものだが、3人は人助けに行ったのだよ。うっかり忘れるところだった。

想像してみた。助けを必要としているのが日本人の子供だとしたら。劣化ウラン弾の放射線で癌になって死んでいくのが日本人だとしたらどうだろう。危険を顧みず彼らを助けに行った3人の行動が、感動的に思えてきた。3人は遭難者ではなく、二次災害に遭った救助者にも見えてくる。

そう。3人の行動がちっとも立派に見えないのは、助けに行った相手が日本人じゃないからだった。当然、イラク人から見たらすばらしいことだから、「人質にしてしまった事を恥ずかしく思う」という言葉は心からのものだろうね。他国から見ると、たとえばフランスのルモンド紙は3人を高く評価しているが、日本人自身よりは見えてるってことか。費用対効果から言って、今回の救出費用は日本のイメージアップ費としては安いもんだと思うが、どうだろうか。

多くの日本人が、3人を過小評価している事に無自覚なのはしょうがないとしても、政府が率先して3人の行動を否定するのはまずい。イラク人を助ける事に価値が無いと言ってるのと同じことになる。自衛隊のイラク復興支援が偽善だって、世界に宣言してることにならないか。テロを煽ってどうするのさ。

| | Comments (5) | TrackBack (0)

2004.04.16

テロに屈しない

人質3人が解放されてなにより。日付順に書くつもりだったけど、これは今書かないとね。

イラクのファルージャでは、米軍が70人死んでイラク人が700人も死んでいても、それに対する日本人の関心は低いようだけど、3人の誘拐事件に対しては、被害者を批判する人も含めて日本中大騒ぎだったね。なんだか日本人がみんな家族のようだったぞ。家族だからこそ心配かけるなと怒る、みたいな。わたしも心配してたけどね。

さて、気になったのはばけらさんと同じく「テロに屈しない」という言葉。

ブッシュが言うところの「テロに屈しない」は、9.11以前から予定していたとされるイラク攻撃に対する口実だったりするのは置いといて。本来の意味から言うと、「テロリストの要求を聞かない」「テロリストとは交渉しない」とともに、「テロを恐れて行動を制限しない」というのも重要な要素。アメリカが、スポーツイベントもアカデミーショーも、警備を厳重にしつつも行っているのはそのため。

そう考えれば、テロを恐れずイラクに入って行った3人も、立派に「テロに屈しない」行動をしたと言えるわけだ。なのに、「テロに屈しない」という言葉を使って自衛隊撤退に反対しつつ、「危険だとわかってて行くなんて馬鹿だ」などと言う人がいるが、意味もよく考えずに使うのは恥ずかしい。自衛隊撤退反対、かつ、3人の行動はけしからんという意見の人は、「テロに屈しない」という言葉を使わないように。って、小泉首相もか。

さすがに、アメリカのパウエル長官はその意味を知ってるから、「テロを恐れずに良い事をしに行った人を批判してはいけない」と、もっともな事を言うわけだ。

ところで、6月の参院選が近くなったら新幹線には乗らないようにしよう、などと考えているわたしは、テロに屈しまくりなわけだが、「テロに屈しない」ことがいいかどうかは場合によって違うだろうね。たとえば、自爆でないハイジャック犯に対しては、要求を呑まないものとの世界的な合意があれば発生はずっと低くなるはず。一方、イスラエルやロシアの場合は、自らの暴力的な政策を見直さないとテロは無くならないだろう。場合によって違うんだったら、「テロに屈しない」という十把一絡げの言い方はダメってことだね。

| | Comments (0) | TrackBack (0)